イーゲルヒュッテ
プロフィール

イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
ごにょごにょ

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
私のメアドを知らなくても届くエラいメール

名前:
メール:
件名:
本文:

--/--/--//--.
スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

2005/04/29//Fri.
じゃ、私はクイニー・アマンで

フランスへは行けないので、新しい背広を買い、
それを着て気ままな旅に出ようというのが永井荷風。
(萩原朔太郎だったかもしれません。よく確認しておきます。2008年10月30日記)
同じようにフランスへ行きたいけれど、金銭に余裕がなく、
新しい背広も買えない。新しい帽子も贅沢すぎるから、
せめて新しいネクタイ位で我慢しようとするのが中島敦。
フランスは勿論、背広もネクタイも新調出来ないので
パン屋のクイニー・アマンで我慢するのが私。

漢学者の家系に生まれたことに起因しているのか、
中島敦の主要作品というと『李陵』、『弟子』、『山月記』、これら三点に絞られる。
他に入るとすれば『名人伝』か。
中国の史実、伝説に基づいたものばかりが光を当てられ、他の作品があまり知られていない。
南方パラオを題材に取った『南島譚』(「幸福」、「夫婦」等)、芥川賞候補作『光と風と夢』は
『ジキル博士とハイド氏』で有名な英の作家R・L・スティブンソンの伝記風の小説。
また作者にほど近い人物が登場する『かめれおん日記』や『狼疾記』、
植民地下の朝鮮半島を描いた『巡査のいる風景』等様々なスタイルの小説を生み出していた。

斯く言う私も「中国の史実、伝説を基に小説を書いたヒト」、ぐらいの認知しかしていなかった。
E・T・A・ホフマンの『砂男』の主人公ナタナエルに憧れる
少し病んでいた私に薦められたのが『木乃伊』という作品だった。
梗概はエジプトへ遠征したペルシャ人部将が、
とある墓所で見つけた木乃伊と対峙したとき、強烈な既知感に
襲われ、自分はかつてこの木乃伊だったことを実感する。
前世の自分との対面は前々世と前世の自分の対面でもあり、
更にその前の…合わせ鏡のように無限に続く己の過去との対峙、
男は不気味さに慄いて気が狂ってしまう。
薦めてくれた人物のほくそ笑む顔が瞼に浮かんだ。
確かにこの不気味さ、不幸の感じは『砂男』のナタナエルっぽい。
中国以外、しかも古代オリエントを書いていたことの物珍しさ。
戦争突入への気運が高まっていた時世に〈こんなもの〉をという驚き。一気に興味が湧いた。

小説の他に歌稿や漢詩も残されているが、書簡が面白い。
かなりの筆マメで、夫人となった橋本たかに宛てたものが多い。
パラオの南洋庁へ行ったときも折に触れては、
家族に宛てて手紙を書き、(しかも子供と夫人は別内容)優しい家族思いな一面が窺える。

「この間ぼくは、とてもめずらしいものをたべたんだぜ。なんだかあててごらん。
海にすむものでね、君のしってるアンデルセンのお話に出てくるものだよ。
わからなかったら、お母ちゃんにおききなさい。さよなら」
(昭和16年9月12日 子供達に宛てた手紙『中島敦全集2』528ページ下段)

年齢が作品のバロメーターとはならないが、享年33歳、
もう少し長く生きられたら、と考えずにはいられない。

「吃として霜柱踏みて思うふこと電光影裡如何に生きむぞ」
(『憐れみ讃ふるの歌』 電光影裡:電気の光がパッと光っては消える短い間に等しい一生
『中島敦全集1』381頁5行目)


『中島敦全集1~3』ちくま文庫

中島敦 | trackback(0) | comment(0) |

comment









ブログ管理人にのみ表示ヲ許可する

trackback

trackback_url

copyright (C) イーゲルヒュッテ all rights reserved.
[ template by 白黒素材 ]

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。