イーゲルヒュッテ
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イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
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2006/02/28//Tue.
続鰐 Ⅰ(文豪に謝れッ!企画)

ドストエフスキーの『鰐』の続きを勝手に想像してみました。
ネタ元の『鰐』についての感想を記した拙文
『鰐の腹中へプチ旅行』
も見て頂ければ、慶賀の至りです。
興味のある方はどうぞ。
こんな駄文より原作を知りたいと思って下されば、尚うれし。

(登場人物等:『鰐』腹の記事と記憶を頼りに作成。)
セミョーン・セミーヌウィチ……語り手。
イワン・マトヴェイチ……セミョーンの友人。鰐に丸呑みにされ
            鰐腹の中で暮らしている
エレーナ・イワーノヴナ……イワンの妻。鰐を見たいと言っていた
             張本人。
チモフェイ・セミョーヌイチ老人……鰐の中のイワンをどうする
             べきかとセミョーンが助力を仰ぎに
             行った人物。
興行主……ドイツ人で鰐カルルヘンの飼い主。
カルルヘン……鰐。

我が友、イワン・マトヴェイチが鰐に呑み込まれたことで
人気もまばらだったアーケードの一角は俄かににぎわいを
みせた。
あの日エレーナにせがまれてこの小規模の動物園を訪れた僕達。
一番鰐を見たがっていた彼女は、微動だにしない鰐に呆れて
猿や鸚鵡の方に感心が移ってしまい、僕もそれに付き合うように
見て回っていたので、イワンがあんなことになってしまうなんて
思いもしなかった。
おとなしくしている鰐をちょっとからかっているだけだろう、
ぐらいの認識しか持っていなくて、鰐がみせた鈍い動きに油断
していたのがいけなかったのだ。
手袋をひらつかせ鰐にちょっかいを出しているイワンに
きつく注意すれば丸呑みされずにすんだのかもしれない。
今となっては何を言っても無駄だが。

今のところはカルルヘンと仲良く共存状態が続いているらしく、
彼は至って元気である。
仕事の帰りにアーケードへ立ち寄って、様子を見に行くと
周囲の人間と張りのある声で話している。
話しかけようにも大勢の人に囲まれているためになかなか話が
出来ない。出来たところで、「やあ元気?」「エレーナを
よろしく」といった簡単な言葉を二言三言かけ合うだけだ。
イワンは幸福と言えば幸福なのかもしれない。
怪我ひとつ負わずに鰐の腹の中で生活し、今までただの名も無き
市井の一人だった彼が「イワン」として皆の注目を
引きつけることになったのだから。もっとも名前の前に「あの鰐
腹の人」というような意味合いの説明つきではあるが。

見物人がまだいない朝早くに僕はイワンの元を訪れた。
エレーナを誘ったのだが、先約があるから今日は無理だと
言われたのである。
化粧をするのに夢中だった彼女は一度もこちらを振り返ること
なくこう言った。
「イワン?ああ、鰐腹の方ね。二日前仮装パーティで知り合った
髭のイワノフヴィッチ伯爵かと思ったわ。彼、まだあの中にいるの
ねえ。離婚しようにも書類に本人の署名が必要だし、いい加減に
してほしいわ……私がつねったら出てくるかしら。
あらやだ、つねったら私が鰐に触ることになるのよ。
想像しただけで気持ちが悪いわ。おお嫌だ。丸呑みにされて
イワンみたいにお腹の中に住むのは絶対嫌よ。
――私、最近つねるのが凄く上手になったのよ。セミョーン、
試してみる?」
エレーナにつねられる前にそそくさと彼女の屋敷を出て行った。
彼女はもう次の相手を探すのに忙しいようだ。
「……まあ、これも一つの運命だね。鰐に呑み込まれることは
計算外だったが、いずれ僕の進歩的な考えが皆に伝わると思って
はいたんだ。
昨日もモスクワのJ新聞社が簡単なコラムの執筆を依頼しに
来たんだ。有り難い話だが僕は鰐に住んでいるからものを
書いたりは出来ないと断ったんだが、口述で結構、こちらで
文章にするので是非ってしつこくてねえ。
役所に勤めていた頃の方がのんびり出来て良かったよ。
…どうだいセミョーン?こいつの腹の中に君も住んでみないかい。
エレーナと君が入るぐらいの余裕はまだあるんだ。住めば都、
いや都というより楽園さ。はじめは少しばかり窮屈だと思ったよ。
でも広けりゃ良いってもんじゃないだろう?空間をいたずらに
持て余している方が格好悪いじゃないか――ほらシベリアの凍土
みたい酷寒の使い途の無い土地よりか、狭くても実りの多い土地
の方が価値があるだろう?……」
彼の鰐腹快適生活の口上は一時間以上にも及び、何を話そうと
思ってここへ来たのかを僕は危うく忘れるところだった。
「イワン、鰐腹の生活が如何に素晴らしいかはよくわかったよ。
いずれ一緒に同居してみたい気がしないでもない。
でも君の今の処遇は有給休暇を利用しての旅行になっているんだ。
しかも、その期限も迫っている。
少し前にチモフェイ老人と相談したんだが、出張扱いというのは
どうだろう。イワン・マトヴェイチ、外国へ長期出張。」
「ふむ。確かに良い考えだが、出張の目的はどうするんだい。」
「今日はそれを一緒に考えようと思って来たんだよ。」
ようやく本題を切り出すことが出来た。
彼が文字を書ける状態に無い以上、他の人が代筆しなければ
ならない。本来は妻であるエレーナが書類を書くべきなのだが、
イワンに愛想をつかして離婚したがっている彼女は次の伴侶探し
に忙しいらしく、なかなか捕まらないので、期限が迫っている今
僕が書類を作成しなければならない。
週に一度の休みを利用して今日ここを訪れた訳だが、
鰐腹の(本人曰く楽園らしいが)住人と化して一躍時の人となって
からというもの、以前より口が滑らかになってなかなかこちらに
話す機会を与えてくれなかった。
周囲に注目されている自負からか嵩にかかった物言いをする
ようになってしまった気がする。
僕が何か喋るとイワンはせせら笑いながら発言の稚拙さを指摘する
のが腹立たしく、言葉を慎重に選んでいると自然と口数が減って
しまった。
「…セミョーン、君とこうして話すのも良いがこうもたどた
どしいと埒が明かないよ。チモフェイ老人も交えて3人で
話をしようじゃないか。」
「僕では足らないってことかい?」
「そうとは言っていないだろう。ほら、僕たち二人より三人の
方が良い知恵も出てくるもんさ。サンニンヨレバモンジュノチエ、
だっけ?東洋の諺にもあるだろう。」
「君がいちいち僕の言うことに偉そうにつっかかって来なければ
もっと喋ってやるよ。
ちょっと注目を浴びるようになったからって…」
「悪かったよ。でも、他の人の意見も聞くべきだろう。
チモフェイ老人は僕らの上司に当たる訳だし。」
「わかったよ、呼んで来る。」
もうイワンと二人でいることに辟易した僕は、彼の提案に
おとなしく従った。





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