イーゲルヒュッテ
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イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
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2006/06/09//Fri.
ライフリサイクル③

ライフリサイクル③です。

「この言葉、セリフをどうしても書きたいい!」という理由
だけで書き始めるのは無謀だと知りつつ見切り発車で運行、
何気に第3話。終着駅は…?
『続鰐』もよろしくね。

前々回分と前回分はこちら
ライフリサイクル①
ライフリサイクル②

街頭でのビラやティッシュ配りは、女性は男性よりも近寄って
手渡した方が受け取ってもらえることが多いらしい。
その鉄則を知ってか、奴もしっかり私の方へと一、二歩歩み寄って
この四角い厚紙をくれた。
「おお、好感触。よっしゃ!おにーさんもう一枚あげちゃう。」
名刺入れからもう一枚取り出し、無理に押し付けてくる。
「いらない。…いらないって。日頃のポケットティッシュ収集癖が
仇になっている気がするわ。」
余分にもらおうとして配布人の周辺を徘徊していた時のことを
少し後悔する。チョット、いやかなり意地汚かった気がしてきた…。
「遠慮すんなよー。え、マジでいらないの?マジで?
そっか…ふうん。」
名刺をしまったのを見て安心したのも束の間のこと、今度は鞄から
茶封筒を取り出し、例の口角を上げた笑みを浮かべた。
「じゃあ、これあげる。」
こちらの都合を考えずに突きつけるのが上手いのか、
私がぼんやりしているせいか。うう、貧乏が、この手がみんな
いけないんだ。
この封筒をそのポストっぽい口ん中に入れてやろうか。
「何?何が入ってるの?」
「決まってんじゃンッ!死亡承諾書。必要事項書いておいて。
後で回収するから、っていうのは嘘。そんなのは入っていないけど
今は開けちゃダメ。」
「…うん、わかったー。今。今、すぐ開けるね。」
「開けるな」は「開けろ」の同義語だもん。開けてやるわ。
上下に封筒を振って開封部を指でちぎった。
中を覗いてみる。…紙一枚?これだけ?
「…しけてるわね。ただの紙じゃないようだけどシールだなんて。
子供でも喜ばないわよ。しかもなんで筆字調で『差押さえ』。
他の言葉はなかったの?「努力」、「根性」の方が今どき珍重
されるんじゃない?」
これはシールなんかじゃなくてステッカーだ、という主張を
繰り返しているが、どうでもいい。
何度でも貼れるスグレモノ。あーそうですか。
あまりのいらなさすぎに感動の涙がこみあげてくる、
わけはないけど、ポケットティッシュの方がありがたいなあ。
債務者でもないのに、なぜ『差押さえ』?
地味に、物凄くヤな感じ。
「あーあー、封を切らなかったら返品可だったのに。
残念だったねえ。ああ。でもまあ、せっかくだし、
貼っといたらー。」
「…そうね。こんなシールどこで使うのよ。
あんたの仕事って消費者金融とかそっち系?
まあ、こんなあからさまな小道具使うトコなんて
ないでしょうけど。
だいたいねえ、そのー、ライフリサイクル?
ライフリサイクルって何よ?」
「よくぞ聞いてくれました!」
別にホントに聞きたい訳じゃないわよ、単なる突っ込みよ、会話の
キャッチボールよ――何よ勝手に喋っちゃって再生ボタンの
スイッチが押されたみたいじゃない。いつ口を挟めるのかな。
「えー弊社ライフリサイクルの主な事業内容を簡潔に説明させて
頂きます。弊社は、生きる意欲を失った人様から余命を貰い受け、
それを生きたいと願う方々へ譲渡する橋渡しのような
役割を果たしております。
勿論、誰でも構わないという訳ではございません。
まず登録された譲渡者側とされる側との入念なマッチングを行い、
人格や思考、行動パターン等の点において譲渡後の違和感を解消
するよう努めておりますし。
とはいえ、過去の思い出話等につきましては多少困難が伴うことが
あります。もとは異なる人生を歩んできた訳ですから仕方がない
と言えばそうなのでしょうが。
譲渡者に関する豊富な資料も準備させて頂いておりますが、大半
のお客様は半分程度お読みになられる程度ですね。
中には全く目を通さない方もいらっしゃいますから。
記憶の面に関しては周囲の人間が話すことに適度な相づちを入れ
それなりに話を合わせるのが妥当でしょう。
面倒な場合は度忘れしたふりをする、過去のことを振り返ること
への嫌悪感等を示して話題を断ち切るというのもあります。
それと弊社では譲渡者が余命を譲渡する際、素敵な思い出深い
いまわの際の演出なども手掛けておりまして、お客様には
ご好評の言葉を頂戴しております。
あ、ちなみにそのステッカーはですねえ、」
「もしかして借金で首が回らなくなって……ってヤツ?」
「ご名答。借金苦でシャッキング!ってヤツ。」
その勇気を讃えよう。面白くないけど。
「応援します!あなたの人生の途中下車!
余命代行はライフリサイクルへ!…ああ喉渇いた。
よし、ほぼマニュアルどおりに喋れたぞ。」
胸ポケットから取り出したLRと金色に刻字された手帳を
開いて満足そうにうなづいている。
脇から覗いて見たら勧誘の文句めいた言葉がぎっしり書いてあった。
「なーなーなーうなうなうなな♪」
「づきっ♪うななうななうなづきマーチ♪
なんでそんな歌知ってるの?」
さあ?こっちも同じ気持ちでいっぱいよ。

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