イーゲルヒュッテ
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イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
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2007/04/01//Sun.
続空中ブランコ乗りのキキ・焼き鳥編

「こんなのキキじゃないやいッ!!」とはらわたが煮えくり返る
方もいるかもしれませんが、あくまで〈遊び〉、です。
それを念頭に置いた上で読み進まれることをお薦めします。
今回のキキは男の子ヴァージョン。


キキも2度目なら~♪もっと上手に…書けているのか?
なんか長くなってしまったわよ。

女の子ヴァージョンはコチラ。続空中ブランコ乗りのキキ

四回宙返りを成功させたキキは白い鳥になった。
今までにないくらいの拍手と賞賛の声を貰って。

宙返りを成功させたその刹那、自分の身体がみるみるうちに
小さく軽くなっていくのを感じた。
しなやかな筋肉が発達した腕は翼に、すらりと伸びた足は短く
なって小枝にとまるのに丁度良い鉤爪が。
大きく傾いだブランコから勢いよく手を離し、生まれたばかりの
翼を上下させて必死に羽ばたく。
羽ばたくたび、空中ブランコに乗ったときとは比べ物に
ならないほどの浮揚感と快感に包まれ、キキは興奮した。
どよめくテントの中を、大きく悠々とひと回りした後、テントの
隙間から外の世界へと飛び出して行った。

あの宙返りは人間の領域から外れているものだった――
三回までは血の滲むような練習で実現できた。
が、それにもう一回転加えると均衡を失って落ちてしまう。
また失敗した。背中の防護網の感触が憎らしい。
三回のとき以上に、手の皮が何度も剥けるほど練習しているのに。
「三回宙返りだって奇跡みたいなもんだろう?それ以上はいくら
練習しても無理さ。無駄無駄。人間にはできやしない……
玉乗りをするってのはどうだい?サーカスの花形空中ブランコ乗り
からの転向としては意外性があってウケるかもよ。」
玉乗りピエロのロロは練習を続けるキキをいつもそう揶揄した。
「地面を這いずり回るピエロなんてお断りだね。
それなら、いっそあの高い所から落っこちて死んだ方がマシって
もんさ。…父さんみたいにね。」
「せいぜい頑張んな。大スターのキキさま。」
ロロにからかわれるほど、負けず嫌いなキキはより一層ブランコに
取り組んだ。
人間にはできやしない――人間の領域を完全に超えているから。
三回のときも周りにそう言われた。奇跡に等しいことだと。
けれども、何度も宙返りを成功させるキキを見て、奇跡と
言う者はいなくなった。キキがそうさせた。
キキの成功を知って、余所のサーカスでも三回宙返りのショーを
行おうと躍起になっている。
特に金星サーカスのピピは公けには披露されていないが、既に
練習では何度か成功しており、近々興行するらしいとの噂が
キキの耳にも届いていた。
自分以外に三回宙返りができる空中ブランコ乗りが増えたら――
その不安がキキを四回転宙返りへと駆り立て、何度も網に
叩きつけるのだった。
皮が剥けマメだらけの手を見つめて、三回宙返りを初めて
成功させた日のことを思い出していた。
一瞬の、水を打ったような長い長い沈黙の後の歓声と賞賛の声、
割れんばかりの拍手。
もし四回転を成功させたら、きっとこれ以上の興奮が――。
人間には到底不可能?
だったら――人間なんてやめてしまえばいい。

波止場にいる不思議な老婆のことは港町に住んでいる者なら
皆知っていた。
昔この土地に住んでいた魔女の一族の末裔らしいと専らの
噂で、薬の知識が豊富なのはそのせいだということだったが、
真相は誰も知らない。
薬効には定評があったが、謝礼として法外な金額を要求する
らしく、安価な市販薬が流通する現在では、薬の調合を依頼する
者は殆んどいない。
「…本当に後悔しないんだね。そうまでして四回宙返りに
こだわるのなら止めはしないさ。お金はいらないよ。別に礼なんて
しなくていいのさ。」
しわくちゃの手から受け取った薬の小瓶。
青く透明な液体が入っている。
四回宙返りを飛ぶ直前に飲めば、一回だけ飛べるようになる。
一回で構わない。自分だけしか知り得ることのない世界を見たい。
世界で初めて四回宙返りを成功させるんだ。
後のことはどうだっていい。
決意を固めたキキはサーカスの団長に、四回宙返り挑戦の
意思を伝えた。ほぼ一方的に。
その日の夜、彼は白い一羽の鳥になった。

鳥が生き延びていくためには、より楽に、体力を消耗させずに
スマートに飛ぶこと。
気流に乗って上昇、滑空をして、羽ばたきの回数を減らし、
危急の事態に備えて体力を温存させ、
天敵に狙われる隙を極力少なくする云々――。
カモメやウミネコばかりが多く見受けられるこの町で、
彼は見慣れない白い鳥だった。
なり立ての頃は、感激を抑えられないまま、気ままに
宙返りをして飛んだりもしたが、拍手も歓声も聞こえてこない
状況は、その気力を失わせた。

あくる日何の気なしにフラフラとキキは空を彷徨っていた。
気づけば懐かしいサーカスのテントの上空。
帰巣本能、という言葉が思い浮かんだ――。
観客の拍手と歓声が洩れ聞こえてくる。
人間だった頃の思い出が去来して、テントの周りを
何度も何度も回った。
拍手も歓声も彼に送られたものは一つとしてなかった。
疲労した身体を休めるため、テントのてっぺんにとまろうとした
そのとき銃声が響いた。

「婆さん、捕ってきたぞ。気絶しているが殺しちゃいねえ。
謝礼は弾んでくれる約束だったよなあ。」
猟銃を肩にぶらさげた男が鳥の足を掴んで下品そうに笑う。
差し出された鳥を確かめるかのように、まじまじと見つめ、
独りごちた。
「馬鹿な鳥だねえ。人間は人間らしくやってりゃいいのさ。
分不相応な望みを持つから悪いんだよ。
でも、そのおかげで私の商売も成り立つってモンさ…。
あたしが欲しいのはコイツの骨だから、肉はアンタにやるよ。
煮るなり、焼くなり好きにするがいいさ。」
「骨?肉じゃないのかい?結構美味そうな鳥じゃないか。
酒の肴にぴったりだ。」
「アンタにゃ、関係のない話だよ。…さて、あの薬を今度は
ピピに売りつけてやろうか……」

うーんと呻き声を上げた。まだ、頭がクラクラする。
度重なる練習で防護網が擦り切れて耐久力が弱まっていたせいで
キキの身体は地面に叩きつけられた。
背中や後頭部が痛むが、幸い怪我ひとつしていない。
あそこから落ちたのか…。
吊るされた空中ブランコを見上げ、溜め息をもらす。
大きく息を吐いた途端、お腹が鳴った。
夕食を食べて以来何も口にしていないのを思い出す。
キキは夜食をする性質ではないが、無性にお腹が空いて
仕方がなかったので、調理場の方へ向かった。
向こう側からロロが紙袋を片手に歩いてきた。
ピエロは丸っこい方が可愛げある、と言って憚らない彼は
買い食いの常習犯だった。
可愛げたっぷりな彼は紙袋をキキの前で左右に揺すった。
甘辛い醤油の良い香りが鼻をくすぐる。
「よう、キキ。グッドタイミングだな。今、町の屋台で
焼き鳥を買ってきたんだ。どうだ食うか?」
「…いらねーよ、馬鹿。お前のせいだ。」
ロロのせいではない。

本歌取り企画(二次創作) | trackback(0) | comment(10) |

comment

2006/08/27 20:33

夢オチかい!
でも原作の印象を引きずらずにイーゲルさんらしい作品になっていてこれ好きですよ。

piaa | [ edit ]

2006/08/27 20:51

ははは。夢というか脳震とうオチ?です。
残酷童話っぽくなってしまいました。

イーゲル | [ edit ]

2006/08/27 21:42

焼き鳥編につられて、「美青年」から参りましたpierrotですw
焼き鳥でも物語になるんですね。笑いがあって好きです。買い食いの常習犯って(笑)甘辛い醤油の良い香りが……。食べたくなったので買ってきますwキキじゃないよね……。脳震とうオチで良かったですw

pierrot | [ edit ]

2006/08/27 22:48

pierrot様いらっしゃいませ。
もうこれは貴方の焼き鳥発言なくしては作られなかった物語です。
素晴らしいアイデアを有難うございます。
しかしながら焼き鳥編と銘打っておきながら、焼き鳥の出番が少な過ぎて申し訳ないです。

イーゲル | [ edit ]

2006/08/28 00:57

イーゲルさんの男の子版キキだ!
「…いらねーよ、馬鹿。お前のせいだ。」 が、なんか好み、と思い読み始めました。
 あの薬は、なんと元人間である鳥の骨から出来ていたんですね! おそるべし。しかもキキの骨で作った薬を、ピピに売りつけようという……ゾクゾク。そうやって、次から次へと……。
 「もし四回転を成功させたら、きっとこれ以上の興奮が――。人間には到底不可能? だったら――人間なんてやめてしまえばいい」というジャンキーのような思考が、鳥になっても退屈でふてくされたような顔をした、不良キキらしいです。
 脳震盪おこしたのに、平気で立ち上げり、ロロは買い食い、という、サーカスの雰囲気も、不良化しているところがいい感じです。
 うーん、やっぱり好みでした。  

リリーブルー | [ edit ]

2006/08/28 11:42

不良化サーカス(笑)。
老婆を悪人化してしまいました。

脳震盪起こしたのにこんなにあっさり立てるものなのかは疑問ですが、まあいっか!と開き直って書いちゃいました。

イーゲル | [ edit ]

2006/09/12 23:24

こんなに面白い作品に、遅れて参戦の私、貪るように一気に読みました。

参った!!(>_<)
途中まで、ヤケクソのキキの刹那的なシリアス展開と思いきや、撃たれて終わりじゃないとこがいいです!

ロロのせいではない…
のところ、思わず「ちびまる子ちゃん」のナレーションが頭を過ぎりました。

ウイット!これぞ、ウイット!
イーゲルさんのセンスは、やっぱり最高です☆

あきらら | [ edit ]

2006/09/13 09:25

当ブログはキートン山田がナレーションを担当してるんです、というのは嘘です。
「面白い」と言って頂けて嬉しい~。
感動、心がほっこりあったまる的ストーリーは私には無理ですので、「面白い」が最大級の賛辞です。

焼き鳥編を書いた後、こんなくだらないアイディアが浮上。
「銀曜サスペンス サーカス空中ブランコ乗り消失事件 サーカスの花形スターの謎の消失!四回宙返りに隠された真実とは」
書きませんよ。
何となく思いついただけです。
>ウィット
欲しいです。そういうものどこかに落ちてないかしらん(泣)。今すぐ拾ってくるから。

イーゲル | [ edit ]

2007/04/02 12:18

訪問履歴から失礼いたします。
ご閲覧ありがとうございました^^

都市伝説をモチーフにした小説やその他短編など書いてます。
http://intuitions.blog60.fc2.com/

Anku | [ edit ]

2007/04/02 12:44

Ankuさんこんにちは。

別役実の名作童話をひどく歪曲している
気がしますが、書いてみたかったので
書いてしまいました。
そちらのブログへも遊びへ行かせて頂きますね。

イーゲル | [ edit ]









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