イーゲルヒュッテ
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  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

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    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
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2005/05/29//Sun.
Das Parfum 〈鼻男の一代記〉とか

好き過ぎて中々読み終われなかった本。
『香水 ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント著
池内紀訳(文藝春秋刊、2003年度に文春文庫で文庫化)。
読んで気に入りしばらく放置、していたら正味半年程
借りてしまい、とても申し訳ないことをしでかした
大学4年の頃――貸主は教授なのに。

内容を一言で表せば「体臭を持たない特異体質の男が
香水を作る物語」となるだろう。
ただその作成方法が異常なだけ。
(あまり言及すると面白味がないので直接内容に関する
ことはここまで)
自分が興味深かったのは、科学技術の発達によって、
それまで師弟関係の下で何年という年月をかけて
体得せねばならなかった香水の調合師としての知識、
技術を得ること無しに、全くのド素人でも香水を調合
できるようになったということだった。

「あのペリシエのようなちんぴらは、昔ならとうてい看板を
出せなかった。何もかも不足している。職人気質も、教養も
忍耐力も、それに同業組合の秩序に対する気くばりも。
あんな青二才が成功したというのも、二百年前、あの偉大な
マウリチウス・フランジパーニが―わが同胞のイタリア人!―
すてきな発明をしてくれたからにほかならない。酒精の匂いを
取り出してくれたおかた。(中略)
しかしながら、すべての偉大な行為が光とともに闇の側面を
もち、人類に幸福をもたらす一面でおぞましさや悲惨さを
もたらすように、残念ながらフランジパーニのすばらしい
発明も嘆かわしい結果をともなっていた。花や薬草、木や樹脂
や分泌液や獣の脂の精を壜づめにすることを知ったために、
香水調合の能力は永年にわたる修練や知識を必要としなく
なった。もはやもぐりのいかさま師にでもできるのである。」
(文春文庫80頁11行目~81頁10行目)

ここに噛み付いたのは中島敦の『文字禍』を読んだことに因る
ところが大きい。
文字(殊に書物)を通じて様々なことを知ることが出来る
ようにはなったが、それは本当に自分のモノになっているのか
という懐疑――実際に経験せずとも、書物によって疑似体験
出来てしまう便利さは、上辺だけの浅薄な知識を徒に殖やして
いるのではないか――

「文字の無かった昔、ピル・ナピシュチムの洪水以前には、
歓びも智慧もみんな直接に人間の中にはいって来た。
今は、文字の薄皮(ヴェイル)をかぶった歓びの影と智慧の
影しか、我々は知らない。近頃人々は物憶えが悪くなった。
之も文字の精の悪戯である。人々は、最早、書きとめて置か
なければ、何一つ憶えることが出来ない。着物を着るように
なって人間の皮膚が弱く醜くなった。乗り物が発明されて、
人間の脚が弱く醜くなった。文字が普及して、人々の頭は、
最早働かなくなったのである。」
(ちくま文庫『中島敦全集1 『文字禍』43頁6行目~
11行目)
著者自身膨大な資料を元に作品世界を構築する博学な人物で
あったため、自嘲のようにも思える。
覚えようとしなくても、それが書いてある箇所を開きさえ
すれば知識は簡単に手に入るようになった。
一概に悪いとは決め付けられないが、ふと立ち止まると
自分で獲得した教養の余りの少なさに愕然として――














小説 | trackback(0) | comment(2) |

comment

2007/03/04 10:56

イーゲル様
albrechtと申します。
『香水』で検索してここにたどりついたんですが・・・
>人々は、最早、書きとめて置かなければ、何一つ憶えることが出来ない。
・・・携帯と検索サイトのおかげで、人々は書きとめる事さえ止めてしまいました。その情報がどこに存在するかも気にせず、ただ消費するのみです(笑)。

albrecht | [ edit ]

2007/03/04 20:44

albrechtさんはじめまして。
>『香水』で検索してここにたどりついたんですが
『香水』の感想というよりも中島敦『文字禍』がらみで
読み返すたび『香水』の中身に関してはトンと触れていなかったなあと反省していたのですが、
この度、このようなコメントを頂いて、大変感激しております。
『文字禍』の頃は文字化することで記憶のよすがを
残していましたが、
昨今は携帯に検索サイト……便利すぎて困りますよね。
私事ですが、今朝、ホテルの予約を取った際のことでした。
ホテル側から連絡用の電話番号を教えて欲しいと言われ、
相方(夫)の携帯電話番号を口頭で言っていたのですが、
最後の4桁分を度忘れしてしまって、急いで買い換える前の
携帯の電話帳を見ながら伝えました。
電話番号を覚えるのは得意な方だったのでショックでしたね。

ちなみに私は自分の携帯の番号を知りません。
かける機会がないので覚える気になれなくて。

イーゲル | [ edit ]









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