イーゲルヒュッテ
プロフィール

イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
ごにょごにょ

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
私のメアドを知らなくても届くエラいメール

名前:
メール:
件名:
本文:

--/--/--//--.
スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

2006/10/03//Tue.
『仮面の告白』

シェアブログ1152に投稿

仮面の告白
仮面の告白
posted with amazlet on 06.10.01
三島 由紀夫
新潮社
売り上げランキング: 12,899
おすすめ度の平均: 4.14
5 フェチシズム。
5 フェチシズム。
5 果たして、作家の死に方が作品に結びつくのだろうか?

先日Y氏に齧られかけた平岡君こと三島由紀夫の『仮面の告白』。
マイナー短編ばかりでなくそろそろ有名作品、長編の方も
読んでみようとやっと思い立って購入。

大学生の頃に相方が卒論のネタのひとつとして買って読んでいたので、
所有しているのを当てにしていたら、
「『仮面』~?んー、知らないな。どっかにあるぞ、多分。
覚えてないけど。それより『奇面組』(『ハイスクール奇面組)見なかったか?」
知らんわ。彼の中では三島由紀夫のランクはかなり低いようです。
卒論ネタのひとつとして三島を読んでいたようですが、読んでいる
最中から「俺には合わない」「気持ち悪い」云々。
他の男性陣からも気持ちが悪いという読後感を聞きまして、
殿方は自分の貞操の危機を予感してしまうせい?と少し腐女子的発想をして
しまいました。
散々ブーイングを浴びせられていたのでチョット気が引けていた部分が
ありましたが、この度意を決して読んでみました。

鍛え上げられた肉体のよう。引き締まっていながら、つくべき所には
ちゃんと肉が付いているメリハリのある、艶かしい文章。

まずのこの題名が曲者です。
ドイツ語を教えて下さった先生がこんなことをおっしゃっておりました。
「『仮面の告白』なんて仮面が告白をするんだよ。
仮面というのは自分を隠す、偽るための道具で、告白というのは
真実を喋ることだから、これは全く逆の行為だよ。
それを題名にしたというのが凄い。」
(他にも、『午後の曳航』や『鏡子の家』等の題名の付け方について
熱く語っていらっしゃいました。)
自伝的色彩が強いと主張しつつも、「実は嘘八百」的な身のこなし、
只者ではありません。
本当の姿を探そうとするこちらの眼はおろか、自分自身さえをも欺き通そうと
する感じがします。
『仮面の告白』=男色的=自伝的著作でこれを書いた著者もその気有り、と
等号で結ばれたりするわけですが、確かに同性愛的嗜好が顕著で
男性に対する欲望の疼きを感じる場面も多いです。
聖セバスチャンの縛めの絵画、近江という青年に対する欲望は非常に具体的。
「彼の二の腕が固くふくれ上り、彼の肩の肉が夏の雲のように盛り上ると、
彼の腋窩の草叢は暗い影の中へ畳み込まれて見えなくなり、胸が高く
鉄棒とすれ合って微妙に慄えた。こうして懸垂がくりかえされた。」
(74頁3~5行目)
近江君の腋の下見過ぎです…。本人の腋の下は草叢レベルではなく糵(ひこばえ)だそうです。
近江君等自分の好みの同性を目で犯すかのごとく具体的に書いております。
後半の方へ差しかかると園子という女性と親しくなりますが、
男性に感じたような肉欲的なものはなく、プラトニックで純粋な愛情で
未だかつて感じたことのなかった類のものでした。
それまで、女性に対し欲情した経験がなかったため自分でもこの感情を
持て余しているようで、今まで行なってきた「悪習」を思い出して、
罪悪感に苛まれます。
「――愛かね?それもよかろう。しかしお前は女に対して欲望があるのかね?
彼女に対してだけ「卑しい希み」がないという自己欺瞞で、女という女に嘗て
「卑しい希み」なんて持ったことのないお前自身を忘れてしまおうとする
つもりかね?(中略)
園子の裸かを想像したことが一度でもあるかね?お前の年頃の男は若い女を見るときに
彼女の裸かを想像しないではいられないという自明の理ぐらい、お前にも
御得意の類推で見当がついているようなものだがね。何故こんなことを言うか、
お前の心に訊ねてごらん。類推はほんの一寸の修正で可能ではないかね?」
(161頁3~11行目)
同性に対する愛と異性に対する愛の形が異なったとしても、これはこれ、それはそれと
割りきれない気持ち――余りに純粋過ぎるのではないでしょうか。

同性愛と異性愛、二つの概念の間で絶えず揺れ動くさま。
汚穢屋になりたいと願う一方で天勝になりたいと願ったり、
戦死するのを望みながらも誰よりもはやく防空壕へ逃げ込んだり――
どっちつかずのグレイな自分。
それをはっきりとしたモノに変えようと、必死にもがき足掻く
自分探しの物語としても読めますね。

今のところではこのような感じです。再読したら新しい発見が
あるでしょうし、それもまた愉しみです。



女の子の従妹二人と戦争ごっこをしている場面で
「僕戦死してるんだってば」と言って倒れ伏す様を読んだとき、
『クレヨンしんちゃん』の死体ごっこを思い浮かべてしまいました。

(ところで、『仮面の告白』とは関係ありませんが、草叢の「叢」という字は
いかにも生命力の強い雑草がおい繁っている感じがしますね。)

*10月5日分追加
昨日『美徳のよろめき』を入手。
「〈美徳〉がよろめいたら〈美徳〉じゃない。それをよろめかせるところに面白みがある」
とこれまた『仮面』で熱弁を奮ったドイツ語の先生がこの題名について熱く語ってらっしゃいました。
なるほど!
三島由紀夫の旨味成分は矛盾し、互いに相容れない対象同士を娶わせて、
逆説的とも言える新たな価値観を作り出す匠の技だったのですね。

この記事に点数をつける

小説 | trackback(0) | comment(2) |

comment

2006/10/07 00:05

「美徳のよろめき」
わたくし先週読みましたの。
表現が、いやらしくないのにいやらしい
鮮やかなのに、なんだかかげっているかのよう
「真紅の喪に服する」という言葉に
わたくしは三島様の凄さを実感しましたわ。

仮面の告白は友人に貸したきりまだもどってきません。来週返してくれるそうですのw
読むのが楽しみですわ!

ojousama | [ edit ]

2006/10/07 08:04

お嬢様。
『金閣寺』と『美徳のよろめき』が手元にあるのですが、後者から読んでみます。

>表現が、いやらしくないのにいやらしい
鮮やかなのに、なんだかかげっているかのよう
そうですね。何かこう互いに矛盾しているような対象が出てきて、それをきれいに並べたてているかのような感じ、そこが好きです。

イーゲル | [ edit ]









ブログ管理人にのみ表示ヲ許可する

trackback

trackback_url

copyright (C) イーゲルヒュッテ all rights reserved.
[ template by 白黒素材 ]

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。