イーゲルヒュッテ
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イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
ごにょごにょ

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2006/10/14//Sat.
走れべこ刑事

くだらな系読み物『べこ刑事』です。
因みに「べこ」とは牛のこと也。
興味のある方は続きをどうぞ。

ジリリリリリリ。
今どき珍しい黒のダイヤル式電話のベルの音。
白髪まじりの天パーの頭をかきむしりながら受話器を耳に当てる刑事長。
左手には食べかけの粒あんぱんが握られたままである。
「こしあんは邪道、白あんは論外」が彼の口癖だった。
「…もしもし、こちら百足署ー。……何ッ!」
「どうしたんスか、デカ長。事件が起きたみたいな顔して」
「大変だ。二丁目のパン屋のパンの中に縫い針が入れられたという
脅迫電話があったそうだ。至急現場へ急行しろ。」
「おお、大変だ。パンの中に縫い針が入れられた。」
「大変だ。パンの中に縫い針が入れられた。」
 ……
「大変だ。パンにぬいぐるみが入れられた。」
 ……
口から口へ、伝言ゲーム風な伝達状況。べこ刑事の元へこの情報が
入った頃には、
「大変だ。パンダのぬいぐるみが盗まれた。」
と変わってしまっていた。
べこ刑事は牛を引きながら現場へ急行、と言っても牛任せなので、
ことのほかスローペースだが現場へ向かうために着実に進んでいる。

「デカ長、デカ長は現場へ行かないんスか?事件は会議室で
起こってるんじゃないんスよ。
デカ長が直接指示を出した方が効率的じゃないんスか?」
「そう言うお前はどうなんだ。私には、…私にはやらねばならない
ことがあるのだ。いろいろ忙しいんだぞ。」
「俺は署に残って雑務とか報告書の整理とか雑務とか雑務とかいろいろ
あるんスよ。」
「雑務しかないじゃないか、この阿呆が。」
刑事長は粒アンパンを平らげてカスタードクリームパンの袋を開けた。

べこ刑事が目的地の二丁目のパン屋へたどり着くまで残り約百メートル。
牛の機嫌も良く比較的スムーズに現場へ駆けつけられたことに
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間――
ドンッ。弾かれたように尻餅をついてしまった。
目の前には小学校高学年ぐらいの女の子二人組みが心配そうな顔をして
立っている。
「あ、ご、ごめんなさいお爺さん。私よそ見してて気がつかなかったの、ね。ね?」
「そうよ。ね?」
「本当にごめんなさい…。」
謝ってその場から立ち去る二人を無言で見守るべこ刑事だったが、
足に履いているもの――ローラーブレード――が目に入ると急に
駆け出して、女の子の前に立ちはだかった。
老齢とは思えない素早い動作。
やっぱり怒っていて追いかけて来たんだ――そう思ってうつむいていると
「何だその靴は。そんなものを履いて歩き回ったら危ないだろう。
ウチの外孫も雪が降るとミニスキーなんて履いて歩き回って、危なっかしくて見てられん。
せめて頭にヘルメットか何か付けて欲しいもんじゃ。
転んで頭に怪我でもしたらどうする。頭は割れたらデパートじゃ
買えないんじゃぞ。何度もそう教えているんじゃが……」
頭一個イチキュッパー、グレードが高いのはニーキュッパー。
見切り品の商品(頭)がワゴンに所狭しと並ぶ姿を想像して、
一人の女の子は笑いをこらえていた。
くつくつと笑いを抑える様子につられてもう一人の女の子も静かに
笑い出す。
べこ刑事の話はまだ続いていたが、二人は話の内容を聞いちゃいなかった。
「……わかったかな。お嬢ちゃん方。おじちゃんは心配して言ってるんじゃよ。」
「はあーい。」
「この輪っかの付いた靴で遊ぶ時は、ヘルメットか何か着けないと
ダメじゃよ。ミニスキーをするときもじゃ。
ヘルメットの代わりという訳じゃないが、これでもかぶったらどうじゃろ。」
べこ刑事は手荷物のずだ袋の中から、ステンレス製のボールを取り出して二人に手渡した。
「…おっと、イカン。現場へ急がねば。じゃあ、気を付けて遊ぶんじゃよ。」
牛を追いたて彼は去って行った。
手渡されたボールは自分たちの顔をぼやけて映し出し、珍妙な老人
の記憶と相まって余計におかしかった。
「そういえば、ミニスキーってなあに?」
「さあ?」

二個目のカスタードクリームパンを完食しそうなその時、刑事長の声が署内に響いた。
「痛ッ…。なんだ?――あ、針だ。縫い針……入ってた。
おい、現場へ行った連中に撤収するよう言っとけ。」
「あーい。デカ長、事件は現場だけで起きているとは限りませんでしたね。」
「だな。勉強になっただろう。事件は署内でも起こりうるんだ。」
「あい。早速報告書の作成に取り掛かるでアリマス。」
〈了〉

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