イーゲルヒュッテ
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イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
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2006/12/10//Sun.
一夜分の歴史  中原中也

その夜は雨が、泣くやうに降つてゐました。
瓦はバリバリ、煎餅かなんぞのやうに、
割れ易いものの音を立ててゐました。
梅の樹に溜まつた雨滴(しずく)は、風が襲ふと、
他の樹々のよりも荒つぽい音で、
庭土の上に落ちてゐました。
コーヒーに少し砂糖を多い目に入れ、
ゆつくりと掻き混ぜて、さてと私は飲むのでありました。

と、そのやうな一夜が在つたといふこと、
明らかにそれは私の境涯の或る一頁であり、
それを記憶するものはただこの私だけであり、
その私も、やがては死んでゆくといふこと、
それは分かり切つたことながら、また驚くべきことであり、
而も(しかも)驚いたつて何の足しにもならぬといふこと……
――雨は、泣くやうに降つてゐました。
梅の樹に溜まつた雨滴(しづく)は、他の樹々に溜まつたのよりも、
風が吹くたび、荒つぽい音を立てて落ちてゐました。



雨が泣くように降っていた夜、コーヒーに多めの砂糖を入れて
掻き混ぜて飲んだ――
どうってことのない普通の出来事。
劇的な何かが起こる日よりも何にも変わりばえのない日の方が
生涯では多いだろうし、そんな日のことなんて忘却の彼方へ消えてしまう。
でも、これも自分の境涯の一頁で記憶できるのは自分だけで、
その存在が消えてしまえば消失する。
諸行無常は世の道理。わかってはいるけれど驚いて、しかも
驚いても何にもなりゃしない。
そしてまた、雨が泣くやうに降る――

中原中也の場合はこの無常の感触を詩に込めて今日まで伝わって
いるけれど、才能の光彩がない凡庸な私はどうすりゃいいの。
とりあえずコーヒーを飲もう。砂糖が多目のヤツを。

(あとオマル・ハイヤームの『ルバイヤート』(詳しくはこちら)を思い浮かべました。何となく。
無常観というと『徒然草』や『方丈記』よりも先に思い浮かぶのは
こっちです。似非日文だなあ。)

ルバイヤート
ルバイヤート
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オマル・ハイヤーム 小川 亮作
岩波書店
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4 酒、酒、酒…。
5 酒!あ、でもイスラムでは酒は御法度だったのでは……
3 翻訳が・・・

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