イーゲルヒュッテ
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イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
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2007/01/19//Fri.
(濃縮還元)ライフリサイクル 其の一

『ライフリサイクル』を書き直し濃縮還元版にしました。
初めに書いていた物もしっかり残ってますが――
まあ、其処は其れ……(酉ツ九芸者みたいだな。)

学校の成績不振+それに伴う家庭環境の悪化+恋の痛手+諸々の
小さい不幸α≒身投げ、そのような公式は無いにしても、
不幸の重圧、閉塞感から逃れる方法の一つではあることには
間違いないだろう。
橋の上の娘。
ナイフ投げの男がやって来る気配はない。
フランス映画『橋の上の娘』は身投げしようとした少女を
ナイフ投げの男が救うところから始まるラブストーリー。
ナイフ投げのショーで的の役を演じ、
刹那的で貫くような刺激に満ちた生活を送る男と女――

映画のようにはうまく事が運ばないのが現実で、八月の平日昼間に
この周辺を通り歩く者はいなかった。
摂氏三十五度の気温、猛暑日ならばなおさら――
熱が少しこもった錆びた橋の欄干で頬杖をつき、少女は
川の流れを見ていた。
晴れた日には小魚の群れをごくたまに見かけるが、コンビニの
ビニール袋やペットボトル、生活排水が流れ込んでいる。
汚い川――
ここに自分の身体が浮かぶ様を思い浮かべ、たじろいだ。
いかに自分の身を粗末にしようと企んでいようとも、この汚さの
前ではたじろぐ権利ぐらいはあってもいいだろう、そうも思った。
(別の川にしようかな。もっと水のきれいなトコに。
それともこの川の上流へ行けば人が寄り付かないから汚れてない
かも。)
よし、逝くぞと決意したらすぐにでも飛べそうだったが、
川の汚さで命拾いしたことにがっかりする。
(他の川を下見してからでも遅くはないよね――)
身投げするのはお魚の餌になりたいからという理由は、
一風奇をてらって受けを狙っているようだが、案外そういう
冗談を言う者が多いことを彼女は知らない。

飛ぶ気が失せ、帰宅したら何をしようか考えながら川岸の方を
見やると、青い鳥が目の端をかすめた気がした。
青緑色の羽と川という場所を考えると魚を餌にしている
カワセミだと思ったが、自信はない。
幼い頃に鳥類図鑑で見惚れていた美しいあの鳥が何故……
確かめるためにもっとよく見ようと思って
臍の下ギリギリのところまで欄干に身を乗り出し探してみたが、
目当てのモノはもう何処にもいなかった。
「――あ、やばッ。」
急いで体勢を戻そうとするものの、思うようにいかない。
焦って足をバタつかせた。
食道の辺りまで出かかった心臓を飲み込み、深呼吸を数回して
気持ちを落ち着かせる。
(福転じて禍をなす。!はっ、パンツ見えたかな…、って
誰もいないか。)
死ななくて済んだこと、下着を見られずに済んだ安堵感に
入り混じる苦笑い。
今日自分がここに来た理由を考えれば、自然落下の法則通りでも
全く問題無かったのだから。
やる気がそがれ、家へ帰ろうと舗道側へ踵を返した。

「あ、お構いなく。どうぞどうぞ続きを……。もしかして、近くに
いると集中できません?なら少し離れていますから。」
いつの間にか近くにいた男が言った。
炎天下に黒のスーツを着用するもの珍しさと精神力に心密かに
敬意を表す。
こちらの顔をチラチラ見ながらノートに何かを書き付けている。
ふと手を止めると少女の顔を見据えてこう言った。
「貴女、身投げするつもりでしょう。あんなに身を乗り出していた
んだからほぼ間違いないよね。
そして今、気が変わってやめるつもりだったとか…。
どーんと逝きましょうよ。ためらわずに勢いつけてさあ――
有言実行といきましょうや……」
スーツケースから一枚の紙を出した。
DMの返信ハガキで宛先がライフリサイクル行き行き消されて御中になっていた。
希望の死因の欄には、「身投げして魚の餌になりたい」と。
希望の逝去日の予定は今日で、場所はこの川――
「違うわよ、私。こんな返事出していないんだけど。
身投げなんてしないわよ。筆跡だって違うし。」
「またまた、怖気づいちゃって。やだねえ、この人ってば。
さっさとやっちまえばいいじゃん。さもないと契約不履行だよ。」
「本当に違うんだって!強要しないでよ。契約なんてしてない。
だいたい…契約ってどんな内容よ?」
「知りたい?でも契約した人にしか教えられないし……。」
「じゃ、いい。――私ウチ帰るわ。」
「特別に教えてあげるからー。えーと、弊社ライフリサイクルでは
余命の譲渡転売を主に承っております。
世にはびこる生ける屍ども、あ、いや、生きる意欲を失った方々から
本来生きる筈であった寿命の余命分を譲渡してもらって、希望者に
転売して限り有るプライスレスな命を有効活用することを目指そう、
まあそんなトコだ。」
「変な会社ね…。儲かってるの?」
「右肩上がり。需要が多くて供給が間に合わないぐらい。
特にこの世に生まれ出てきたい彼岸の住人からの要望が殺到
しているよ。やっぱ出生率の低下、少子化の影響かなあ。」
「ヒガンノジュウニン?要するに死者ってこと?」
「死者に限らず、この世に居ない存在は皆彼岸の住人とウチの会社では
そう呼んでいるんだ。
諸般の事情で長生き出来なくて、来世に望みを賭けていたのに、
世の流れは少子化、いつまで経っても順番待ちの状態――
それなら生きていることがしんどい人から余命を譲って貰っちゃえ、
欲しい人に売っちゃえ、みたいな――」
自分と同じような考えを持った人間、同じ死亡理由を求める人が
いることに若干親近感を覚える。
右斜め上がりの細めの文字、神経質そうなイメージが湧いた。
宛て先の「御中」の文字や昇天のお返事欄には「逝きます」の前に
「謹んで」と書き加えられ、一般常識力のある人物のようだが、
何故?疑問に思ったものの、思ったところでどうしようもない
ことに気づき、ハガキから目を離した。
男はというとノートにしきりに何かを書いている。
気づかれないように背後から覗き見てみると、

顔:十段階評価中六 
二重瞼で目が大きい。唇が厚めで色っぽいが、カサついている。
乾燥肌?ところによりオイリーなせいかニキビがある。

頭:十段階評価中五 
多分良くも悪くも無い気がする。普通レベル。

性格:十段階評価中五 
ぶっきらぼうだが、そこそこ優しい気がする。(単なる勘)

年齢:十段階評価中九 
十代後半の若い身空。上玉。

備考:契約者とは異なる女性。契約者の最期を見届けるために
訪れた○○川で接触。
何といっても売りは十代後半という年齢の低さ。
アンチエイジング対策不要。顔や頭は中程度かと思われるが、
その辺は磨けばどうにかなるだろうし、蓼食う虫もいるだろうし……。

「蓼食う虫って、私、蓼かよっ。……」
「――今、蓼ってどんな植物って思っただろ?」
無言で首を縦に振った。
「やっぱり、頭は四にしておこうかな。」
(其の二に続く。)

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