イーゲルヒュッテ
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イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
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2007/02/14//Wed.
ねむり姫ちゃん (仕事その2)

勝手に出来上がってしまったので書いてみました。
前作はコチラ。Bitte.
『仕事』
(『(濃縮還元)LR』もやらな。)

自身の眠りによって温存された諸々のエネルギーを他者へ転用し、
結果消費エネルギーの節約循環に努めて社会に貢献する会社、
シュラーフェン。
勤続二年目の若手、合歓田は一仕事を終え給湯室の自販機で
お気に入りの苺牛乳を買い一気に飲み干して紙パックを握り潰し
紙パック専用ゴミ箱へ捨てた。
果汁1%の乳飲料でブドウ糖を補給して更衣室へ向かう。
休日。この言葉の響きはどうして心を浮き立たせるのか。
望むように過ごせたことなどめったにないのに。
あれもこれもそれもと休日の青写真を数葉頭の中に並べては
ひとりほくそ笑む。
選りすぐった青写真に当てはまるように休日を満喫する意思を
秘めて会社を後にした。

黄昏時、シュラーフェン本社ビル前――
沢山の買い物袋を抱えて合歓田はタクシーを降りた。
日頃のうっぷんを晴らすべく手当たり次第買い漁ってしまったが、
まだ口座には使いきれない程の残高が残っている。
金銭面に余裕があると物欲が薄れてつまらないと誰かが言っていた。
それを聞いたときは、金持ちの嫌みにしか聞こえなかったが、
自分もそうなりつつあるのだろうか。
学生の頃の四桁、ごくたまに五桁の残高が懐かしく羨ましく思われる。
(あの頃だったら泣いて喜んだだろうな――)
帰るべき家はあるが、仕事が仕事なだけに会社へ舞い戻る方が
自然になってしまった。心の中で「ただいま」を言うのが習慣に
なりつつある。家とは認めていないが、そうなる日も近い。
自動ドアが開き、社内に足を踏み入れると斜め十五度程に首を曲げ、
会釈した受付嬢と軽く目が合った。
居心地の悪さを感じ慌てて近くの観葉植物に視線を移す。
幹同士が複雑に絡み合ったベンジャミンの木。
葉は青々としているが、土の方はカラカラに乾いていた。

周囲を見渡すと見慣れない男性が一人ロビーに座っていた。
視線の交錯再び。今度は同性というのが悲しいところ。
年齢ははっきりとは判らないが、外見的には合歓田と同じぐらい
に見える。ふっと目が合った瞬間立ち上がり、早足で駆け寄って
来た。
「す、すみません突然。シュラーフェンの社員の方ですよね。
――あ、あのう〈ねむり姫ちゃん〉は元気ですか?」
「はあ、……誰です?ねむり姫ちゃんって?そんな社員ウチには
いないと思いますけど。いち平社員の私に聞くよりもあちらの
受付で尋ねられた方がよろしいんじゃないでしょうか。」
妙なことを聞かれた不快感を押し殺し、努めて紳士的に言った。
「それが駄目だったからこうして貴方に聞いているんじゃないですか。
個人情報だから答えられないって言われましたよ。
ねむり姫ちゃん、Schlafitchen(シュラーフィットヒェン)は
こちらにいらっしゃらないんですか?」
外国語の部分をやたら流暢に言うのが腹立たしさを水増しさせる。
この男はそんな意を介する訳もなく勝手に喋り続けていた。
「ねむり姫ちゃんはですね、寝顔が、寝顔が凄く素敵な女性なんです。
彼女の寝顔は、いつまでもいつまでも傍で見続けていたい、
そう思わずにはいられないんです。つい、じっと見つめてしまう。
そうして――――」
数秒の沈黙。物思いに耽るような眼差しをし、閉ざした口を再び開いた。
「貴方、今日休みだったんですか?買い物帰りって感じのように
見えますが。」
「え、ええ、まあ……。でも、もうすぐ、仕事に戻るんですけど。」
Yシャツを引っ張って腕時計を見なくとも、ロビーには壁掛けの
時計があった。時間に追われるサラリーマンのつもりだったが、
うまくいかない。
「あの時計で、六時までのあと二十分。いやいや十五分!十五分だけ
付き合って下さいよー。」

十五分間の約束で男の話を聞くことになった合歓田。
会社に最も近い喫茶店へ入り窓際の一番奥のテーブルに着いた。
男は店に入るや勝手に「いつもの」を「二つ」頼んでしまったので、
メニューを見る必要は無かったし、入店してから
それほど間をおかずにコーヒーが卓上に並べられた。
ほろ苦く酸っぱい香ばしい香り――懐かしい。
(最後に飲んだのはいつだっけ)
合歓田はシュラーフェンに勤めるようになってからカフェインの
含まれる飲料は極力避けるようにしている。
眠れなくなるから。
仕事に差し障りが出てしまうことを恐れてのことだった。
お冷の水を一口含んで喉を潤す。準備が整った所で男に尋ねてみた。
「眠り姫ちゃんって何ですか?」

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