イーゲルヒュッテ
プロフィール

イーゲル

  • Author:イーゲル
  • 699円。タイ生まれ。
    瞳は少年、ところによりおっさん。
    すっとこどっこいな文章und日常の切り売り。
    魚の皮、海老の尻尾を好んで食べます。
    リンクはフリーにござい。

    よく出てくる人たち(一部人外)
    相方(夫)、Y氏undH氏(息子)、不踊木偶〈オドラデク〉(不可視舞弄具ペット)。
ごにょごにょ

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
私のメアドを知らなくても届くエラいメール

名前:
メール:
件名:
本文:

--/--/--//--.
スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

2008/06/05//Thu.
遍歴(和歌(うた)でない歌)中島敦

ある時はヘーゲルが如(ごと)万有をわが体系に統べんともせし
ある時はアミエルが如つゝましく息をひそめて生きんと思ひし
ある時は若きジイドと諸共に生命に充ちて野をさまよひぬ
ある時はヘルデルリンと翼(はね)並べギリシャの空を天翔りけり
ある時はフィリップのごと小さき町に小さき人々を愛せむと思ふ
ある時はラムボーと共にアラビヤの熱き砂漠に果てなむ心
ある時はゴッホならねど人の耳を喰ひてちぎりて狂はんとせし
ある時は淵明が如疑はずかの天命を信ぜんとせし
ある時は観念(イデア)の中に永遠を見んと願ひぬプラトンのごと
ある時はノヴァーリスのごと石に花に奇しき秘文を読まむとぞせし
ある時は人を厭ふと石の上に黙もあらまし達磨の如く
ある時は李白の如く酔ひ酔ひて歌ひて世をば終らむと思ふ
ある時は王維をまねび寂として幽篁の裏(うち)にひとりあらなむ
ある時はスウィフトと共にこの地球(ほし)のYahoo共をば憎みさげすむ
ある時はヴェルレエヌの如雨の夜の巷に飲みて涙せりけり
ある時は阮籍がごと白眼に人を睨みて琴を弾ぜむ
ある時はフロイドに行きもろ人の怪しき心理(こころ)をさぐらむとする
ある時はゴーガンの如逞ましき野生(なま)のいのちに触ればやと思ふ
ある時はバイロンが如人の世の掟踏躙り呵々と笑はむ
ある時はワイルドが如深き淵に堕ちて嘆きて懺悔せむ心
ある時はヴィヨンの如く殺め盗み寂しく立ちて風に吹かれなむ
ある時はボードレエルがダンディズム昂然として道行く心
ある時はアナクレオンとピロンのみ語るに足ると思ひたりけり
ある時はパスカルの如心いため弱き蘆をば讃(ほ)め憐れみき
ある時はカサノヴァのごとをみな子の肌をさびしく尋(と)め行く心
ある時は老子のごとくこれこの世の玄のまた玄空しと見つる
ある時はゲエテ仰ぎて吐息しぬ亭々としてあまりに高し
ある時は夕べの鳥と飛び行きて雲のはたてに消えなむ心
ある時はストアの如くわが意志を鍛へんとこそ奮ひ立ちしか
ある時は其角の如く夜の街に小傾城などなぶらん心
ある時は人麿のごと玉藻なすよりにし妹をめぐしと思ふ
ある時はバッハの如く安らけくたゞ芸術に向かはむ心
ある時はティチアンのごと百年(ももとせ)の豊けきいのち生きなむ心
ある時はクライストの如われとわが生命を燃して果てなむ心
ある時は眼・耳・心みな閉じて冬蛇のごと眠らむ心
ある時はバルザックの如コーヒーを飲みて猛然と書きたき心
ある時は巣父の如く俗説を聞きてし耳を洗はむ心
ある時は西行がごと家をすて道を求めてさすらはむ心
ある時は年老い耳も聾(し)ひにけるベートーベンを聞きて泣きけり
ある時は心咎めつゝ我の中のイエスを逐ひぬピラトの如く
ある時はアウグスティンが灼熱の意慾にふれて焼かれむとしき
ある時はパオロに降りし神の声我にもがもとひたに祈りき
ある時は安逸の中ゆ仰ぎ見るカントの「善」の厳(いつ)くしかりし
ある時は整然として澄みとほるスピノザに来て眼をみはりしか
ある時はヴァレリイ流に使いたる悟性の鋭(と)き刃身をきずつけし
ある時はモツァルトのごと苦しみゆ明るき芸術(もの)を生まばやと思ふ
ある時は聡明と愛と諦観をアナトオル・フランスに学ばんとせし
ある時はスティブンソンが美しき夢に分け入り酔ひしれしこと
ある時はドォデェと共にプロヴァンスの丘の日向に微睡(まどろ)みにけり
ある時は大雅堂を見て陶然と身も世も忘れ立ちつくしけり
ある時は山賊多きコルシカの山をメリメとへめぐる心地

ある時は縄目解かむともがきゐるプロメシュウスと我をあはれむ
ある時はツァラツストラと山に行き眼鋭(まなこす)るどの鷲と遊びき
ある時はファウスト博士が教へける「行為(タート)によらで汝(な)は救はれじ」
遍歴(へめぐ)りていづくにか行くわが魂(たま)ぞはやも三十(みそぢ)近しといふを


――長いですね。中島敦の読書遍歴が窺い知れるような歌です。
ノヴァーリス、ヴァレリイと表記してしまいましたが、ちくま文庫『中島敦全集1』では
「わ」に濁点が付く表記で書かれています。
他の人の文章を写すと自分も何か書いてみたくなるのは何故だ。

鑑賞用 | trackback(0) | comment(2) |

comment

2008/06/07 17:17

こんにちは☆
これ、イイですね~! 中島敦の作品は、高校生のときの現代文の
教科書以来ですが(汗)、最近つかみ所がわからなくなっている
バイロンや、大好きな詩人たちのことを端的に簡潔に示唆して
いると思いましたv-238 1行1行が重いですね(笑)
打ち込み、大変だったと思います~!

Shallot B. | [ edit ]

2008/06/07 22:43

私はタイピングが遅いので時間がかかりました。
文学者等の特色を簡潔にまとめていて、名前しか知らなくて読む気になれなかったアノ作家もこれを読んでからなんとな~く読んでみようかな、と思った私です。

イーゲル | [ edit ]









ブログ管理人にのみ表示ヲ許可する

trackback

trackback_url

copyright (C) イーゲルヒュッテ all rights reserved.
[ template by 白黒素材 ]

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。